お知らせ

医療法人の経営情報データベース制度について

2023.09.27 企業情報

令和5年8月1日に施行された「医療法人の経営情報データベース」について、多くの問い合わせをいただいた為、その背景と内容について記載を致します。

具体的には、以下の法施行された内容についてです。

令和5年5月 19 日に公布された全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和5年法律第 31 号。以下「改正法」という。)により、医療法(昭和 23 年法律第 205 号。以下「法」という。)が改正され、 医療法人に関する情報の調査及び分析等 を行う新たな制度が令和5年8月1日から施行されることとなしました。

(厚生労働省 医政発0731第2号 より抜粋)

この法律が施行されるにあたって議論がなされた背景は以下についてです。

国民医療費が年々増加傾向である一方、現役世代の人口減少が続く中、2040年頃まで65才以上人口の増加が続きます。また、就業者数が大きく減少する中、医療・福祉職種の人材は現在より多く必要とされています。

そのような背景の中、国でも様々な議論を経て、令和5年6月16日の「経済財政運営と改革の基本方針2023」で持続可能な社会保障制度の構築において、医療法人等の経営情報に関する全国的なデータベースの構築について示されました。

また、昨今のコロナ禍における医療機関への補助金についての関心が高まったことも経営情報の可視化を強く後押ししたとも考えられます。

令和5年8月決算の医療法人から対象となります。ただし、経過措置として令和5年8月から令和6年7月31日までの間に終了する会計年度に係る報告については、一部の報告事項を省略する事ができます。

今回の開示対象は、医療にかかる本来業務の損益についてです。すなわち、病院と診療所です。また、医療法人に複数の病院や診療所がある場合は、定款に記載されている一つ一つの病院、診療所の単位で損益を記載する事となります。

いわゆる、みなし事業を切り分けて開示を行う必要はなく、病院や診療所の損益に含める事になると思慮致します。 参考までに介護事業に関しては、現在、厚労省の老健局で検討が行われているようです。

報告期限は会計年度終了後3か月以内です。ただし、公認会計士または監査法人の監査を受けている医療法人や社会医療法人は会計年度終了後4か月以内とされています。これは、監査法人等の会計監査に時間を要する事に配慮がなされた為です。

これらの提出に罰則規定はないものの、都道府県からは提出に向けた行政指導があるようです。

提出方法は原則、G-MISへの入力とされています。

決算終了後に入力をスムーズに行う為には、毎月の試算表の勘定科目を医療法人会計基準に準拠する事をお勧め致します。

医療法人の経営情報のデータベースでは、財務データの他に「職種別給与総額及びその人数に関する情報」の記載も求められています。任意項目となっていますが、データベースの趣旨を鑑みると給与計算のグルーピングもこの機会に整備する事をお勧め致します。

対象期間は直近1月1日から12月31日まで。これによりがたい場合は、会計年度とされています。すなわち、決算書の給与額との整合性をとる事は不要であり、暦年の給与データをそのまま用いる事ができる為、期をまたいで集計をし直す手間が省けます。

例えば、3月決算の場合は、1月の法定業務が終わった2月以降にこれらの業務を行う事をお勧め致します。決算終了後は決算の影響で諸業務が滞っている事も考えられる為、前倒しで業務を行う事で経理部または人事部の業務の平準化に寄与し、業務の安定性につながると思慮する為です。

また、職員数は7月1日時点の人数で、非常勤職員は常勤換算して記載する事となっています。

最も関心ごとの高い役員報酬については、記載は不要とされました。役員報酬規程等により、役員報酬と給料等を明確に区分して支給している、使用人兼務役員の場合は、使用人部分の給料等のみを記載する事となっています。

報告対象職種は以下の通りです。

医師、歯科医師、薬剤師、看護職(保健師、助産師、看護師、准看護師)、その他の医療技術者等として診療放射線技師、臨床工学技士、臨床検査技師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士)、歯科衛生士、歯科技工士、栄養士等(管理栄養士、栄養士、調理師)社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、看護補助者、事務職員、その他の職員となっています。

また、このデータベースについては医療機関から役員報酬や利益等の機密性の高い情報が特定されることに対して心配だという相談をいただきますが、前述したように役員報酬は記載不要とされ、医療機関が特定されないように配慮されるようにしっかりと議論がなされています。

これらの内容は資料作成に一定の時間を要しますが、データベース化に協力する事で、国民の理解を得ながら医療従事者に適切な賃金の支払いを確保する為の根拠にもなりえると考えられる為、積極的にかつ効率的な取り組みを行っていただく事をお勧め致します。