病院の記帳代行と経理代行の違いについて
アウトソーシングには大きく分けて、「記帳代行業務」と「経理代行業務」があります。 本テーマではこれらの違いについて、具体的に掘下げを行います。
記帳代行業務とは
記帳代行業務とは、お客様から資料やデータをいただき、その根拠資料に基づき、会計ソフトに仕訳入力を行う業務です。
具体的には主に以下のデータや資料をいただき、会計ソフトに入力を行います。
- ネットバンキングのCSVデータまたは、通帳のコピー
- 電子カルテやレセコンからの出力した総括表と窓口日計表の売上に関するデータや書類
- その他、医事課から請求している、「自賠責」「労災」「主治医意見書」等の書類
- 給与台帳のデータまたは書類
- 取引業者からの請求書
- 小口現金の一覧表
- 総合振込の支払い一覧表
の資料から、会計ソフトへの入力を行い試算表の作成を行います。
ただ、病院機能ごとに必要なデータや書類は異なり、使用されているシステムや運用方法によっても必要データや書類は異なる為、その点はご留意お願い致します。
一般的な記帳代行業者(アウトソーシング会社)は、お客様から提供を受けたデータや資料に基づき、試算表の作成を行います。ただ、それだけでは不明な入出金が積み重なり、仮払金や仮受金が多額な残高になっているケースをしばしば見受ける事があります。すなわち、お客様からご提出をいただかなかった内容については、不明出金、不明入金となり掘下げて確認されないケースが多いように思われます。
弊社のように病院に業種特化をしていれば、資料提供を受けていない場合でも医事課がこれらの請求事務を行っているはずなので、こういった書類があると思われる為、念の為、確認をお願いできますか、と資料提供を求めています。
医事課は今までそのような資料提供を求められていない為、提出をする必要がないと考えている為です。正しい試算表をタイムリーに行う為には、双方で仕組みづくりと正しい認識を構築していく事が弊社では大切だと考えています。
また、他のお客様で同じような入金や出金が同じタイミングで発生する事も多い為、お客様のご負担を軽減しながら進める事が出来ています。
弊社ではオプションとなりますが、ライセンス取得のための奨学金を貸与している病院であれば奨学金貸与一覧表の作成、ナースやドクターの社宅一覧表の作成、リース一覧表、割賦一覧表、借入一覧表、デイの利用者負担の未収一覧表、サ高住の入居一時金等の一覧表等を毎月更新し、試算表の正しさを担保する補助資料として、整備確認を行っています。
さらに、社保や国保の返戻、保留の請求を適時行っているかを把握する為に、可視化する為のフォーマットの作成を医事課に依頼する事で、医事課と経理で内部けん制機能を働かせるように、ご依頼に応じて仕組みを導入しています。
弊社では、経理をアウトソーシングする事で、内部管理が緩むことがないように仕組み作りが大切だと考えている為です。
経理代行業務とは
経理代行業務とは、記帳代行業務にプラスして、総合振込への口座情報や支払い金額の登録等、経理スタッフが担っている業務まで幅広く対応する業務です。
弊社の場合は、
・買掛金・未払金一覧表を自社開発した仕訳変換ソフトを用いて、取引業者ごとの支払いサイトに基づいてネットバンキングに支払い金額の登録と口座情報の登録
・電子納税手続き(源泉所得税・住民税・法人税・消費税・地方税の電子納税)
・提携会社が開発したソフトを用いて、病棟別・診療科別損益の作成
・決算後に各都道府県に提出する財産目録・事業報告書の作成
・特定医療法人と社会医療法人が決算後に提出する、定期報告書類の作成
・決算後にWAMに提出する報告書類の作成
・理事会・社員総会の議題案等の作成
・事務長や理事長との定例報告
・償却資産税申告書の作成と提出
・年末調整
・支払調書の作成・合計表の作成と提出
を行っています。
特に、毎月のネットバンキングへの支払い金額と口座情報の登録は、慎重に入力と確認を行う必要があり、かつ、ダブルチェックが必要な業務の為、ご依頼いただくケースがずいぶんと増えています。
弊社では、いわゆる管理会計と言われる、「病棟別・診療科別損益」は試算表の作成が終わった翌日に帳票を完成させています。
病院は試算表だけではどこに課題があり、何を改善すれば良いかを掘下げて確認する事が困難な為、病棟別・診療科別損益をセットでご依頼いただく事を推奨しています。 病棟別にあと何名の患者が入院すれば損益が均衡するか、単価をいくら上げる事で損益が均衡するか、その為にはどのようなチーム医療を行う事で算定件数を伸ばしていく事が可能か等、掘下げたディスカッションのご提供を可能としています。
品質をどのように維持するか
弊社では、定款に記載されている事業ごとに事業別のB/SとP/Lを作成する為に会計ソフトの設定を行います。
もちろん、事業ごと集約すると法人全体のB/SとP/Lが集計されます。
事業ごとに作成する事で手間がかかると思われるかもしれませんが、その方が早く正しい試算表を作成する事ができます。
むしろ、法人全体で試算表を作成すると、内容の検証を十分に行う事ができません。
また、弊社では作成した試算表が適切な内容であるかを、独自のチェックリストに基づき毎月、レビューを行う事で品質の維持を行っています。
前段で記載した残高を合わせる資料や仕組みを構築する事で、試算表の数値の正確性が高まります。病院や介護事業の慣行に応じたポイントのおさえ方で、品質と生産性と価格バランスの取れた仕組み作りを行う事で、記帳代行や経理代行業者の品質の維持向上を行っています。
まとめ
現状だけでなく、中長期的な管理部門の人員体制等を考慮し、早め早めに対策の検討と相談を行う事で、様々な可能性を見出すことができる為、お気軽にご相談やお問い合わせをいただければと思います。