病院のM&A(合併・経営の承継・事業譲渡)
弊社では毎年、2・3件の病院の合併・経営の承継、事業譲渡を含めたM&Aの相談やご支援を行っています。M&Aという表現で様々なご依頼やご相談をいただきますが、組み立ては千差万別です。今回は代表的な手法(スキーム)を簡潔に説明致します。
経営の承継 ①親族内承継
病院で最も多い承継方法が親族内承継です。
創業者である父親からご子息、ご令嬢への承継が最も多いケースと考えます。
手続きとしては、現理事長は理事長を退任。新理事長は理事長に就任。理事会、社員総会での決議と登記手続きとなります。
社員の入退社の手続きをこのタイミングで行う事が多いと思われます。
法人内の役割を引き継ぎながら一定の時間をかけて行うケースが多い為、自然な流れで承継が行われます。
経営の承継 ②第三者承継
第三者承継には、A.「法人内の院長や副院長が理事長に着任するケース」とB.「他の医療法人に経営の承継を依頼して着任していただくケース」の2パターンがあります。
A.法人内の院長や副院長が理事長に着任するケースは、現理事長は理事長を退任。新理事長は理事長に就任。理事会、社員総会での決議と登記手続きとなります。必要に応じて院長としての管理医師の手続きを行います。
借入金の多寡によって、承継の難易度に差があります。
B.他の医療法人に経営の承継を依頼する場合は、早くて半年、一般的には一年近くかけて双方がコンサルに依頼して、内容の確認と調整を行い基本合意書の締結後、様々な内容の確認を行い最終合意契約の締結し、承継を行います。
経営を引継ぐ側が、その医療法人を引き継ぐ事によるシナジー効果や地域医療に与える影響の確認、その法人の財務状況と診療状況の確認、医局の関係性の確認、中心的な医師の面談と継続雇用の確認、看護部長や事務長と面談を行い実態の確認等、いくつものステップを経ながら最終合意に向けて進める事となります。
手続きとしては、理事長を含む理事の全員の辞任、社員も全員が退社。引き継ぐ側の医
療法人の理事が就任し、また社員の入社手続きを理事会、社員総会で決議を行います。
このケースの場合は、都道府県に事前相談を行う事が良いと考えています。その理由は、
行政に法人買収と誤認をされない為に、「経営を承継するに至った理由」と「引き継ぐ
医療法人を選んだ理由」を説明し、理解と了承を求める為です。
理事・社員の変更によって実質、運営する主体を変更する場合は、役員変更届の届出の
提出で手続きとしては完了します。しかしながら、理事及び社員の全員が交代する場合
は、法人格の売買とみなされないように、事前に行政への事前相談をする事が良いとさ れている為です。
事業譲渡
定款に記載されている事業を個別に引き継ぐ事が可能です。
例えば、病院のみ、老健とクリニックのみ等の対象事業を限定して承継を行う事が出来ます。
ただし、病院の場合は調整会議等で事前に諮ってから手続きを行う必要があります。 事前に行政に相談を行い、事業譲渡を行うに至った理由を説明して手続きを進める事をお勧め致します。
手続きは定款変更と管理医師として理事への追加等が必要となる為、理事会、社員総会の決議を行います。
合併
医療審議会を経て合併手続きを行います。
合併する事でマンパワーの調整やマネジメントを行いやすいメリットはありますが、労働訴訟や医療訴訟含めて引き継ぐ事になる為、いわゆる買収監査やデューデリジェンスに時間をかけて行う事が一般的です。 税務的な課題をクリアする必要もある為、スキーム検討段階から病院のM&Aに明るい会計事務所に相談を行っていただく方が良いと考えます。
実務においては、上記内容以外に地域医療連携推進法人を用いた緩やかなグループ化の仕組みを入れるなど、様々な事を検討しベストな承継方法の模索を行う事が中長期的な安定経営に資する事につながると考えています。行政へのアプローチを間違えると、取り返しのつかない事にもなりかねない為、弊社のように病院のM&Aを数多く行っている専門家に相談をする事をお勧め致します。
弊社もそれぞれの事案に応じて、ハンドメイドでベストなスキームと進め方を提示しながら行います。どんな事案でも相談のご連絡をお待ちしています。