病院の経理・アウトソーシングに関するコラム

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病院の経理DX

基礎知識 2022.11.24

医療業界はデジタル化が最も遅れている業界の一つと言われています。
さらに病院の経理部門はデジタル化による効率化が最も遅れている部門と言われています。
そこで、病院の経理DXに向けた検討ステップを紹介致します。

DXとは、そして病院の経理DXとは

DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語で、直訳すると「デジタル変革(改革)」となります。
2018年に経済産業省が公表した「DX推進ガイドライン(現在は「デジタル・ガバナンスコード2.0」に統合)」ではDXを次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

出典:経済産業省ウェブサイト(デジタルガバナンス・コード2.0

病院の経理DXとは、今までの仕事の手順をIT技術を用いて変革し、経理業務にとどまらずバックオフィス業務全般において従来の業務にかかる時間を大幅に短縮し、過去会計から未来会計や管理会計に向けた仕事の転換を図り、病院の利益に貢献する事と、弊社では位置付けています。

従来型(オールドタイプ)の病院経理

経理の業務フローや業務そのものを変化させる事は、とても勇気が必要な事です。
ましてや、デジタル化となると少なからず投資も必要となり、何が正解なのかが分からない中、どれだけの効果を出せるのかを説明する事も難しく、病院内での設備投資は医療現場が優先されるケースが多いのが実態です。

一方で、病院の経理スタッフからは、

  • 今までずっとこのやり方をしていて問題はないので、見直しをされては困る
  • 業務が効率化されて、人員が減らされては困る
  • 何か新しい仕事を追加されても、やっていけるか不安
  • 顧問税理士からも積極的な見直しの意見はない

という変化に対するネガティブな意見をしばしば耳にします。

ただ、今後はインボイス制度(2023年10月以降)、改正電子帳簿保存法に基づく電子取引データ保存の義務化(2024年1月以降)といった新たな法律への対応が必要となります。
この法改正を機会に仕事の組み立てや業務フロー、関連部署との連携の仕組みを見直すきっかけと捉える事をお勧めしています。

経理スタッフの不安心理を解消されないまま、デジタル化を進めても良い結果にはつながりません。
目標と期間を定めた上で、仕事の仕方がどのように変化するのか、また、どのような仕事や役割を担うことができるか等を共有し、合意形成をとりながら進めることが大切です。

以下に一つでも該当事項があれば、見直しやデジタル化、DX導入で効果が期待できます。

  • 伝票や買掛帳等の帳簿類を手書きしている
  • 会計ソフトへの入力は基本手入力している
  • 総合振込については、振込依頼書作成と会計ソフトに入力するための資料を別々にExcelでまとめている
  • メインバンクの口座でネットバンキングの利用を行っていない
  • 国税・地方税の納付や公共料金の支払いを銀行窓口で行っている
  • 業務プロセスが属人化し引継ぎが難しい
  • 何に時間が掛かっているかが分からないが、いつも残業をして忙しい

DXの失敗事例

会計ソフトの開発会社がERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)として称して会計ソフト・給与計算・請求管理をオールインワンにする事で、仕訳に連動できるパッケージソフトを提供しています。それを導入すればデジタル化や経理DXの目的が完了しているかというと、決してそうでないケースがあります。
仕訳連動できる事で大幅に業務効率あがりますが、病院の経理の特性を理解した上で会計業務のポイントをおさえ、DXによる本当の効果を測定する必要があります。
具体的には病院では請求書の発行はレセコンから発行する為、一般的な請求管理のシステムに搭載されている機能の半分も使用する事はないと考えられます。
実際に使用する機能と実装されている機能との乖離がある事もしばしば見受けられ、業務効率以上に固定費が大幅に上がってしまっては失敗事例と言わざるを得ません。一度導入したシステムを変更する事は難しい為、あらゆる角度から検討を尽くし、また、費用対効果の検証を事前に行う事をお勧めしています。

ニューノーマル時代に向けた、経理DXの検討ステップ

「経理スタッフの増員や減員の可能性」、「事業規模の拡大の有無」、「病院の利益の状況から投資可能額の確認」、「求められている経理や財務部の役割」、「法改正の対応」を含めて、今の仕事の延長でディスカッションをするのではなく、将来の人口減少に伴い経理人材が不足する事や経営環境が厳しくなる事を前提とし、今後の管理部門(バックオフィス)のあり方を明確にした上でディスカッションをスタートする事がポイントです。
また、ボトムアップ型の議論ではお茶を濁したような業務改善にとどまる可能性が高い為、理事長や局長、事務長の方針として、思い切った変革をした姿を打出すことも場合によっては必要です。
乱暴な表現をすると、「辞める業務」、「捨てる業務」を明確化する事で、強いメッセージを打出す事ができます。
その上で、ディスカッションテーマは以下の内容です。

 ・会計ソフトは従来のままで良いのか(金額や実際に使用する機能から検討をする)
  ➤会計ソフトへの仕訳入力数や入力時間が大幅に減少する事を想定した議論が必要です
 ・ネットバンキングの活用による、会計ソフトへの入力の効率化・支払業務の効率化・電子納税の対応
 ・インボイスや電子帳簿保存法(電子請求書等)への対応
 ・拠点別で経理を行っている場合の業務の効率化
 ・DXによる残業時間の削減と試算表の早期化
 ・テレワーク対応の可能性
 ・病棟別損益・診療科別損益の作成の効率化
 ・RPA(Robotic Process Automation:ロボティックプロセスオートメーション)の導入による、業務効率の向上


弊社では、会計ソフトそのものに多額の投資をするのではなく、おさえるべきポイントを押さえ、業務変革をすべき点のメリハリを持たす事で、最小の投資で最大の効果を得る組み合わせが結果的に病院では必要だと考えています。
病院の建替えと同じで、便利な機能はあった方が良いという考え方ではなく必要な機能を絞り込む判断と工夫が必要です。
電子請求書の対応は全産業で最も使用されているプラットフォームを使用する事や、会計ソフトはRPA型ではなくシンプルな会計ソフトを用いる事等、何を業務革新する事で効果を引き出すことができるのかをディスカッションを行い、病院の利益の最大化に寄与する為の仕組みと仕掛けが必要と考えています。

上記内容を整えると経理業務は大幅に合理化が進み、経理・財務として今まで未着手だった業務を行う事ができ、または他部門の業務応援を行う事も実現も可能と考えます。

まとめ

病院の経理DXは、病院についての多くの事例を持ち合わせていなければ、何をデジタル化し、どこを業務改善し、何を業務変革させる必要があるかの勘所がつかめない事もある為、詳細についてはホームページを通じてお問い合わせをお待ち致します。

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