病院の経理・アウトソーシングに関するコラム

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病院のインボイス・電子帳簿保存法の対応と経理DX

基礎知識 2023.08.17

弊社に病院の実務でのインボイスや電子帳簿保存法の対応について、多くの相談や問い合わせをいただいている為、改めてコラムとしてまとめましたので、ご参照下さい。

インボイスや電子帳簿保存法の本質的な対応

インボイスや電子帳簿保存法のミニマム対応としては、法対応を最低限の対応をそつなく行う事となります。

しかし、国がインボイスや電子帳簿保存法に込めた法改正の真の目的は、すでに始まっている少子高齢化、労働人口の減少に対応した経理業務の見直しと生産性向上、すなわち経理DXと考えられます。この機会をチャンスととらえた体制整備や仕組みの再構築を行う事です。

弊社のホームページをご覧になられた病院から、以下のような相談も寄せられます。病院のお客様が多いと言われている会計事務所からは、税務署の様子をうかがいながら、ボチボチと見直しましょう、焦らずにというアドバイスだったようです。これで良いのかと不安になり問合せメールをしました、との事でした。

病院のお客様が多いと言われている会計事務所だったとしても、経理実務を経験していない為、実務上の法改正の相談をしても法律的な見解に留まり、本質を突いた経理DXに関してアドバイスは難しいのは無理がない事だと言えます。

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特に大手会計事務所は税計算を行う事がメインの仕事であり、出来上がった試算表をもとに税務的な観点から確認を行い、付随的なコンサルを行っています。すなわち、病院の経理実務の経験がない事から、経理業務にどれほど手間が掛かる事なのかを理解していないケースがほとんどです。

経理DXのケーススタディー

では、どのように経理DXを進めていけば良いのでしょうか。

いくつかのパターンに分けて説明を致します。

①現状、経理スタッフがギリギリの人員で業務を行っていて、法対応どころではない

②経理の中心的なスタッフが定年を控えていて、このタイミングで経理業務の見直しを行いたい

③経理業務は大切なので、若干余裕のある人員体制で経理業務を行っている

④経理スタッフが定着せず、常に派遣スタッフや正職員の入替えが続いている

⑤病院の建替えや新規事業の計画やシミュレーション業務が加わり、従来の経理業務を効率的に行いたい

今後、病院が工夫や努力をせずに利益率を維持・向上させる事は困難である事は、言うまでもない事実です。

また、管理部門が何の業務の見直しもせずに変化を恐れてチャレンジに踏み出さずにいれば、昇給や昇格に耐えうる利益を確保する事が難しいのは自明の理です。

以下、それぞれの事例におけるケーススタディーです。

現状、経理スタッフがギリギリの人員で業務を行っていて、法対応どころではない

このケースでは、いきなり抜本的な見直しをすると業務が止まってしまうリスクが高く、また、スタッフも業務の見直しについて考える余裕がありません。忙しい割には業務の見直しには慎重な方が多い事が特徴です。

中長期的な業務の具体的な方向性を説明しつつ、効率化している実感を重ねながら業務の見直しを段階的に行う事が成功への近道となります。

まずは、業務フローから非効率な業務の洗い出しを行い、心理的ハードルの低い内容を法改正と関連付けて業務負担がこれ以上増えないようにする事を説明し、理解納得を得たうえで、第一弾の見直しを行います。

業務負担が増えずに効率化する事ができるとイメージが持てれば、第二、第三の本丸の業務の見直しへと続けていきます。

経理の中心的なスタッフが定年を控えていて、このタイミングで経理業務の見直しを行いたい

このケースでは、中心的な古参職員が業務の見直しに否定的で、業務改善が進んでいなかったことがうかがえます。

また、理事長や幹部の方が変化を望まない事が多く、前年比較を軸に業績管理を行われているケースです。

このケースの場合は、中心的な古参職員の定年の前後の一回のタイミングで見直しを行う事が効果的です。

これから新たに中心的な役割を担っていただく職員に、今後の医療業界や法人の方向性をディスカッションし理解していただく事で、新たな経理・財務の役割と新しい体制と仕組みに向けて抜本的に動き出すことにつながります。

経理業務は大切なので、若干余裕のある人員体制で経理業務を行っている

このケースは、業務改善をする心理的な余裕がありますが、効率化する事で今まで行っていた仕事が無くなるという不安が経理職員の頭をよぎります。その為、単純業務も手放さず新しい仕組みに対して聞く耳を持たず、抵抗勢力となり事があります。

このケースの場合は、今の経理や財務部門の仕事は未着手の仕事の領域があり、より付加価値の高い仕事がある事を説明し、職員の目線を上げさせる事が大切です。

また、従来の業務と並行しながら新しい仕組みを取り入れる事で、このやり方であれば新たな仕事に着手できる事にイメージを持っていただく事です。

ギアが一つ変われば、驚くほど業務の再構築が進みます。

経理スタッフが定着せず、常に派遣スタッフや正職員の入替えが続いている

このケースは、経理業務の勘所を抑えていない事が多く、ミスが多発する事で不安が募り、ミスの責任を押し付けられることに嫌気をさしてスタッフが定着しないケースだと考えられます。

過去を気にする事無く、ゼロベースでシンプルな仕組みと業務フローに短期間で全て起きなおす事が出来る為、成果が最も早く出すことができます。

病院の建替えや新規事業の計画やシミュレーション業務が加わり、従来の経理業務を効率的に行いたい

このケースは、職員が今までの仕事の組立てでは業務が破綻する危機感を抱いている為、効率の上がる仕組みを複数組み合わせて導入する事で、短期間で見直す事ができます。

経理DXのポイント

上記に記載したように、弊社が支援をした病院の経理DXのポイントは以下の通りです。

ポイント1:医療機関の課題確認と非効率業務の洗い出し

ベンダー主導の自社製品の単品導入は、病院の業種特性の真の課題や業務フローを把握せず、どの業種でも当てはまる内容を説明しますが、我々は医療機関固有の特徴や課題を踏まえたうえで、その医療機関が抱えている課題を解決する為に、業務改善のステップの提案を行います。このステップがなければ、経理スタッフが我慢をした業務フローを続ける事となる為、このステップが最大のポイントです。

ポイント2:会計ソフトの選定

まずは、経理業務の軸となる会計ソフトの選定で、経理DXの進め方と取り組み方に大きな違いが出てきます。

これからの時代の中心はクラウド会計です。銀行の入出金データの自動取込みとAIによる学習機能は必須の機能です。

ただし、クラウド会計は医療会計準則に準拠していないケースが多い事が課題であり、経理DXが進み切れていない病院も多くあります。

また、会計事務所が会計ソフトの変更に大きな抵抗を示すことが病院の経理DXが進まない大きな要因と言われています。

導入件数が多いクラウド会計のデメリットとも言われている、医療法人会計準則に対応していない点については、エクセルを用いて加工する事で手間をかけずに整える事が可能な為、経理DXに向けた第一歩を踏み出すことができるかの分岐点です。

ポイント3:受取請求書の効率的な業務の仕組み

受取請求書の買掛金・未払金の計上と金融機関への支払業務はインボイスや電子帳簿保存法と密接に関係する為、新たな仕組みを導入する事をお勧め致します。

請求書のPDFをAI-OCRで請求金額や消費税率、振込口座を自動読み込みする機能やデジタルインボイスのプラットフォームを用いる事でダイレクトに仕訳に必要な情報や支払情報を確定させる事ができ、費用は発生しますが、活用する事で業務効率が大幅に改善し残業時間の短縮や試算表の完成日数を短縮させる事ができます。

ポイント4:現金のレシートや領収書

また、仕訳に時間のかかるコンビニのレシートや飲食店の領収書は仕訳への自動読み取りの仕組みを導入し、スキャナーでPDF化しインボイスに必要な情報をAI-OCRの機能を用いる事をお勧め致します。

消費税が軽減税率8%や10%、非課税が混在する事もあり、さらに適格事業者登録番号の確認と仕訳への反映が令和5年10月1日以降は必要になる事から、現状の仕組みのままでは業務量が確実に増えます。

また、職員が各自で飛行機の手配やネットショッピングで購入した際の領収書は電子帳簿保存法の対象となります。職員に法人カードを貸与し、領収書の保存等の仕組み化を行う等、法対応に準拠できるような体制整備が求められています。

法人カードは貸与状況の把握や支払限度額等、従来までは懸念点が多くあり運用に踏み切れない法人が多くありました。しかし、現在は貸与者の一覧機能や支払限度額も個別でコントロールできるクレジットカードがあり、カード発行も一定の枚数までは無償等、法人のニーズに応じたクレジットカードを選定する事も可能です。

さらに、利用したタイミングで仕訳に反映できるクレジットカードもある為、経理DXを推進する為にも有効です。

ポイント5:RPAの活用

経理業務には会計ソフトに入力する為の資料作成が必要となります。

毎月のルーチン業務は、RPAを用いてスタッフの業務負担を軽減する事も大切なポイントです。単純業務はスタッフの休憩時間や業務終了後にRPAにて自動化させる事で、職員の業務改善や単純業務からの解放し、スタッフのモチベーション向上に寄与する事ができます。

まとめ

経理DXは法改正に合わせた、新たな時代の幕開けへの対応です。

新たな仕組みを導入すれば、新たな費用が発生する事は当然です。しかし、病院の抱える真の課題を改善し、必要最低限の投資で最大の効果を得る為には、病院に財務・経理の実務に精通した会社に相談や依頼をする事がポイントです。

新たに発生する費用を上回る業務効率によって残業時間の短縮、未着手な業務を新たに行う事ができるようになる、または、将来の採用難に向けた経理業務の見直しの機会ととらえる事ができるかが業者選定のポイントです。

病院の経理DXコンサルを実施している、弊社に問い合わせメールをお待ちしています。

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