病院の経理・アウトソーシングに関するコラム

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病院の電子帳簿保存法の取組みの考え方

基礎知識 2024.01.09

2024年1月から電子帳簿保存法の対応に向け、病院の経理担当者には電話やメール、郵便等で多くの営業の連絡が入っている為、何らかの取組みと対応が必要である事は認識していても、病院として具体的にどのように考え、取り組むべきかを指し示す記載が少ない為、出来るだけシンプルに記載を致しました。

2024年1月より本格施行に向けて

まずは、国税庁のサイトにシンプルに記載されている内容を記載致します。

電子帳簿保存制度は大きく分けて3つの制度に区分されます。

①電子帳簿保存(希望者のみ)

②スキャナ保存(希望者のみ)

③電子取引データ保存(対応が必要)

どの病院も対応が必要となるのは、③電子取引データ保存です。

具体的には、令和5年12月31日をもって令和4年度税制改正で措置された「宥恕措置」は廃止され、令和6年1月1日からは新たな猶予措置が以下のように整備され、次のイ・ロの要件をいずれも満たしている場合には、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができる事とされました。

 イ 保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存する事が出来なかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)

 ロ 税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の」提示・提出の求めにそれぞれ応じる事ができるようにしている場合

参考までに、令和5年12月31日までにやり取りした電子取引データを「宥恕措置」を適用して保存していた病院は、令和6年1月1日以降も保存期間が満了するまで、そのプリントアウトした書面を保存し続け、税務調査等の際に提示・提出できるようにする必要があります。

引用:国税庁 令和5年度税制改正後の取り扱いに関するもの

 電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直し~から抜粋

経理実務として考えるべきはポイント

令和5年10月1日からスタートしたインボイスで財務部門の経理スタッフは従来よりも業務負担が確実に増えています。

請求書にインボイスの登録番号がどこに記載されているか注視しなければ、どこに記載されているか分からない事がしばしばある為です。

そのような状況下でインボイス・電子帳簿保存法の法対応をどのように対応していくべきかを考察致します。

・令和6年秋には郵便料金が値上がりする事から、請求書等が郵便からメール添付や専用プラットフォーム(サイト)からダウンロード方式への転換と運用が大幅に増えてくる事が想定されています。

・特に地方では人口減少が進み、患者さんや医療従事者だけでなく、経理人材も不足または枯渇し、働き方改革もあいまって業務効率を上げた業務の再構築が必須となります。

・都心部でも紙とむきあう伝統的な経理業務では、優秀な人材採用が難しくなり、経営判断に必要な情報やデータ作成が遅々として進まず、エビデンスに基づかない勘と経験による経営判断に頼らざるを得なくなります。

上記の事からも、デジタル化は避けて通る事ができないフェーズに入っています。具体的には、病院の医事請求は紙請求からレセコンに移行し、医事業務が紙カルテから電子カルテに移行している事からも電子化は避けて通れない事は明白であり、後戻りする事すら考えられない状況ですが、同じ法人内の経理業務は電子化が最も遅れている業界の一つに挙げられています。

電子帳簿保存法の対応だけを考えた部分最適では、経理業務全体の効率化は道半ばとなるばかりではなく、業務負担が増えるばかりの結果となります。経理スタッフはどちらかというと保守的な思考をする方が多い為、法対応の為なら業務負担が増えても残業をいとわない人も多くいる一方、業務負担に終わりが無い為、心身をすりへらし突然の休職や退職につながるケースもしばしば発生し、経理のアウトソーシング業務を行っている弊社に相談をいただくケースが増えています。

話しを戻しますと、経理業務は会計ソフトを中心に経理フローが組み立てられています。会計ソフトをクラウド会計に移行する事で、デジタル対応の幅と選択肢が格段に広がり、かつ、低料金でそのメリットを最大限に享受する事が可能となります。経理業務のトータルコストを考えると、会計ソフトはクラウド化の一択の時代に突入したと考えられます。また、電子帳簿保存法は会計ソフトに親和性の高い仕組みやソフトを導入する事がベストです。

例えば、弊社ではクラウド会計は、マネーフォワードクラウド会計を軸に会計業務の全て見直しを行いました。その結果、電子帳簿保存法の対応は無料でクラウドBOXを利用する事ができ、保存方法もドラッグアンドドラッグで保存するだけで、保存時のタイトル入力等も不要で電子帳簿保存法に準拠した保存を行う事ができます。

また、受取請求書をバクラク等の専用アプリを用いる事で、メールで届いた請求書を自動的にAi-OCRで読取り、会計ソフトやネットバンキングにデータ登録を行う事ができるなど、従来まで仕訳と銀行への振込登録で同じ金額を何度も入力していた業務が一度の確認で終える事ができるようになり、少なく見積もっても30%は業務時間が短縮し、かつ、業務品質が高まっています。

別の角度から電子帳簿保存法に取り組む効果として、病院内の限られたスペース問題の解消につながる事があげられます。

紙の請求書から電子媒体の請求書に変わる事で、紙を保管する必要がなく保管スペースで頭を悩ましていた病院にとっては朗報となります。

これも紙カルテから電子カルテに移行する事でカルテ庫のスペース問題に区切りがついた事と同様の結果になると推察します。 一方で、現状と変化なくエクセルで一覧表を作成し、データ保存する方法を選択される病院も少なくはありません。しかし、法改正の趣旨と背景を理解し、上記に記載した医事課業務の変化を財務・経理部門に置き換えて検討をすると、取組むべき一手は明確になり、タイミングと誰に相談をするかがポイントである事はお分かりいただけたかと思います。

終わりに

令和6年4月の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定で、DX化が大きなテーマとして議論が進んでいます。経理業務においても積極的にDX化を推進する事で利益率の低下が想定される時代に対応できる財務・経理部門にいち早く整えていただけるように、弊社も支援体制を整えたいと考えています。

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