現金事故を発生させない仕組みが病院の責務
年に数回、ホームページを通じて現金事故についての相談をいただきます。現金事故、現金の横領、現金の不正、使途不明金の発覚等、表現の仕方は様々ですが、ほんの出来心で始めた事が長期間積み重なったケースがほとんどだと思われます。しかし、なかには故意の横領もあり、現金管理の仕組みの状況に応じた事故発生額の違いがあるように感じます。現金管理について、参考にしていただければと考えています。
どんな仕事でも性善説は成り立たない
弊社がアウトソーシングのご依頼をいただいた際に必ず確認する事項の一つとして、「現金管理の仕組み」や「現金を極力扱わない仕組み」の有無があります。 「この病院には都会の病院とは違い、悪いことをする人はいない。心配しすぎ」とお話しをいただくケースも多くあります。しかし、弊社は病院や介護事業所で多くの現金事故を見聞きしている為、都会や地方だからという事で片づけるのではなく「現金を扱わない仕組みが大原則」という考え方が根本的な考え方です。
現金を扱う限り事故や不正、横領が発生するという考え方が必要であり、それらを行う事ができない仕組みや工夫を行う事が病院の責務です。また、現金事故を防止する為に多少のコストの発生は、現金を扱うための必要コストと考えることが最初のステップです。現金には魔力がある事を性悪説でとらえる事が事務長や経理や財務の管理者には必要です。
現金管理の仕組みが不十分であれば、日々の不正や横領は少額であったとしても、1か月、1年、10年と時間が積み重なることにより、被害額が10万円、100万円、1000万円や数千万円という事も決して珍しい事ではありません。その対象者は経理や医事だけでなく、在宅系の事業を行っている場合は医療スタッフ・介護スタッフも含まれます。
毎日、「夕方の定時」に「金種表」と合わせて「現金出納帳」と「現金残高の確認」をダブルチェックする事は最低限の仕組みです。日々のルーティンを怠ると、現金事故が表面化した際に、多大な時間と労力とコストが発生します。
患者負担金、利用者負担金は現金の受取りを極力行わない
病院であれば「自動精算機」や介護系であれば「口座振替」が有効です。特に介護系は口座振替を徹底する事が現金事故を防ぎ、未収管理も行いやすい仕組みです。
現金管理が弱い病院や介護事業は未収管理も当然の事ながら、弱いことがほとんどです。医事の請求リストと領収書控えによる未収の消込みと経理の未収残高を確認する事で、内部けん制機能を発揮することが出来ます。
上記のような仕組みを入れても、双方でのコミュニケーションを持たなければ意味がありません。また、不正や横領を行う人は、その仕組みの穴を熟知した上で行っているケースがほとんどです。
現金管理に結果的に時間とコストをかけない仕組み
現金残高が多ければ、現金出納業務や現金出納帳の入力、現金の残高の確認業務に時間がかかります。経理スタッフは現金業務が発生する度に業務を止める必要があり、非効率な業務になり、人員を多く抱える、もしくは残業時間が多く残業代が多く発生する事にもつながります。
現金入金については、介護系は手間がかかっても口座振替を徹底することを推奨致します。手数料が発生しますが、現金回収に比べると回収できる割合が極めて高く、現金事故が発生しません。現金を回収すると金融機関に入金する手間が必ず発生する為、その手間を考慮すると口座振替が極めて有効です。
また、現金の出金に関してはクレジットカードを使用する事で現金事務を効率化できます。特にインボイスが施行されてからは、経理業務を効率化する事を目的としたクレジットカードを用いて、経費精算を効率的に行う事を弊社も推奨しています。クレジットカードの年会費や発行手数料が完全無料となるクレジットカードもあり、利用限度額もリアルタイムで増減することができ、バーチャルカードはリアルタイム発行も可能、使用状況もリアルタイムで把握することが出来る等、クレジットカードの利便性を享受しながら、不正利用のリスクが極めて低くなっています。
現金の不正や横領を行ったスタッフが悪いことはもちろんですが、職員を不幸にしない責任は病院側にあると弊社は考えています。コストをかけすぎずに適正人員でオペレーションを行うための仕組みについて、今一度、再確認の機会となれば幸いです。また、現金事故が行らない仕組みづくりの相談をご遠慮なく、ホームページを通じていただければ幸いです。