病院の経理・アウトソーシングに関するコラム

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経理のアウトソーシングとは?メリット・デメリットを徹底比較

基礎知識 2022.10.14

経理のアウトソーシングを行う事に対して、不安を感じる方が多いと思います。 今回は、病院の経理業務をアウトソーシングするメリットと、デメリットの比較を紹介致します。



経理における業務改善のポイント

経理代行の基礎知識

まず、経理の役割から整理を致します。

経理=経営管理と言われています。すなわち、届いた請求書の支払いや給与の支払いを行い、通帳の入出金記録を単に会計ソフトに入力し、試算表を作成するだけでは経理の役割としては不十分です。

運営会議で予算や昨年実績との差異を報告し、現状の課題や改善ポイントの提案、改善活動の結果を報告する事が経理や財務の本来の役割です。

具体的には、請求書の内容を確認し補助資料の作成を並行して行い、従来と異なる支払いがある場合は、その内容を確認し、業績報告ができるように準備を行います。

入金確認では医事課で把握している未収の残高と経理が把握している残高の確認を行い、再請求の進捗状況や請求保留の確認を行います。経理が把握できていない入金がある場合は、その請求内容の確認も行います。

ただ、医療や介護は公定価格で決められた報酬単価の為、管理部門は効率的に業務を行わなければ、法人として利益を積み上げていく事ができない為、十分な経営管理の役割を経理が担っているケースが少なく、多くの医療機関では支払業務を正しく行っている事のみで役割を終えているケースが多いのが実態です。

そこで、経理業務の業務改善のポイントは、以下の3点です。

①業務フローをシンプルにする

②同じことを繰り返し入力するのではなく、データの取り込み等で入力スピードを向上させる

③試算表は補助科目を作って毎月、残高確認を行う



具体的に内容を掘り下げます。

①業務フローをシンプルにする

例えば、経理に売上の報告をする為に医事課がエクセルで資料を作成しているケースが多くあります。しかし、入力の間違いをする等、時間をかける割には正しい情報ではない事がある為、資料作成する為に労力をかけるのではなく、レセコンや電子カルテから出力した資料をもとに会計ソフトへ入力をする事がベストです。

残高確認をする仕組みもなく試算表を作成している事は、業績報告をミスリードする危険がある事を理解する必要があります。

また顧問税理士や会計事務所も、病院や介護事業の仕組みを十分に理解しているわけではない為、もととなる資料の数値が適切に入力をされているかどうかを確認するだけの為、原資資料の金額が間違っていれば、確認の意味をなさないケースもしばしば見受けられます。

②同じことを繰り返し入力するのではなく、データの取り込み等で入力スピードを向上させる

医薬品費や診療材料、給食委託費や検査委託費等の請求書は、

  1. 銀行への支払い金額の登録
  2. 会計ソフトへの買掛金・未払金の計上の入力
  3. 支払い時の会計ソフトへの金額の入力

と3度同じ金額を入力する事が一般的ですが、ツールを用いる事で一度の入力で効率的に入力を完結させる事ができれば、大幅な時間短縮が実現できます。

実際、取引業者の件数が月に500件くらいの仕訳であれば、数秒でデータの取込みができ、金額の入力間違いも発生しない為、入力間違いを確認するための時間も発生しません。

また、通帳の入出金について、8割~9割は毎月同じ相手先です。

一つ一つの仕訳を手入力しては時間がかかり、入力ボリュームが多ければミスタッチをする可能性も比例して高まり、金額の差異が発生すると確認する為にさらに時間を要しています。通帳の入出金のデータは銀行からのデータを会計ソフトに取り込みができれば、大幅な効率化を進める事が可能となります。

③試算表は補助科目を作って毎月、残高確認を行う

残高確認を行わずに試算表の作成をしている病院が意外に多く、かつ、残高が不一致なケースが多い為、決算で多大な時間を要し、残高が不一致なまま決算を終えられているケースもしばしばです。

毎月、確認をしていれば確認する内容も限られる為、その都度、合わせきることが大切です。

続いて、経理代行(経理業務のアウトソーシング)の基礎知識について記載をします。

アウトソーシングの内容については、大きく分けて①記帳代行業務と②経理代行業務の2つのパターンがあります。

1.記帳代行業務は、送られてきた書類やデータを会計ソフトに入力を行う業務です。

2.経理代行業務は、上記の記帳代行業務以外に、買掛金や未払金のネットバンキングへの口座登録や支払金額の登録、市民税や源泉所得税、法人税等の電子納税、決算後の事業報告書の作成、病棟別・診療科別損益の作成を含めた会議資料の作成、理事長や事務長への業績報告等、経理スタッフが行っている全般的な業務までが含まれます。

人口減少が進んでいる地域では、経理代行業務を依頼されるケースが随分と多くなっています。

この傾向はますます多くなるものと思われます。 経理代行業務は、事務長との右腕となり信頼関係を築き、発展させていく為に医療介護業界に精通している必要がある為、アウトソーシング会社を選定する際の大きなポイントになると言われています。

経理アウトソーシングのメリットとデメリット

メリットとは

①コア業務にスタッフを配置できる

経理業務をアウトソーシング会社に任せる事で、今まで経理実務を担っていたスタッフまたは、経理実務をサポートしていたスタッフがコア業務に配置転換または集中する事ができます。

具体的には、経理実務を行いながら、法人全体あるいは管理部門のマネジメント業務は時間的に難しさが伴います。

信頼でき優秀なスタッフはその役割に応じた部署や役職に就いていただく事で、より活躍のフィールドが広がり、結果として法人全体のパフォーマンスを向上させることが可能となります。また、優秀なスタッフは経理業務だけでは物足りなさを感じる為、スタッフの退職に繋がっているケースも見受けられます。

②トータルコストの圧縮

経理スタッフの給与・賞与・法定福利費・退職金・通勤交通費・福利厚生費はもちろんの事、会計ソフトの毎年の保守料やリース料、顧問税理士の顧問料や決算料等、直接的にかかわる経費はもちろんの事、経理スタッフの採用コストと時間、育成を含めた間接的なコストを含め、トータルコストを圧縮し、コストコントロールが可能と言われています。

また、経理や財務管理の質が向上する事で、結果的に直接コストが同程度であったとしても

パフォーマンスが向上したと考える事ができます。

③管理部門全体の業務フローをシンプルに見直しができる

いつしか経理業務は複雑化し、目的が不明瞭なまま資料作成を毎月行い硬直化しているケースがあります。

また、経理部門だけでなく、経理に資料提供をしている部門も本来は不要な資料を毎月作成しているケースもしばしば見受けられます。

優秀なスタッフであればある程、その実態を上司や税理士に相談をしますが、上司や税理士が経理業務に明るくない場合は、業務フローを見直す事で業務に支障が出るのではないかとリスクを感じる為、見直しに否定的な意見を言い、スタッフのモチベーションが下がり、退職に繋がっているケースが見受けられます。

経理業務をアウトソーシングする場合はそのタイミングで、業務フローをシンプルに見直す為、主に医事や総務・人事の業務負荷も低減する事も副次的な効果としてとらえる事ができます。

④人の悩みが解消する

職員を雇用すると、大なり小なり労務問題が発生する可能性があります。その対応に時間を要し、本来行うべきマネジメントが滞る事も考えられます。

また、急な職員の退職時の引継ぎや採用に時間を取られることも無くなります。

昨今では、新型コロナウィルスの感染や濃厚接触の疑いで経理業務が滞るリスクをヘッジする為に、アウトソーシングを検討する相談が増えています。

デメリットとは

①フレキシビリティな対応に欠ける事がある

急な小口現金の精算や急な支払業務への対応性に欠ける事がデメリットと言われます。

②財務管理のノウハウが積み上がらない

予算作成や病棟別・診療科別損益の作成のノウハウが積み上がらないと言われます。

③業界に精通していなければ、経理実務が大きく崩れる可能性がある

医療介護の売上は返戻、再請求、請求保留等が発生する為、制度そのものの仕組みや考え方を理解し、医事課と金額の意味を確認して進めなければ、売上が過大計上となり、未収が膨れ上がるケースや保険等査定減が大きな金額に膨れ上がっているケースが見受けられます。

また、消費税や事業税の考え方を理解していなければ、納税を過剰に行っているケースも珍しくはなく、デメリットと言われています。

しかし、これらのデメリットは事前に調整する事で解決できることがほとんどです。

また、現状でも経理業務が崩れているケースやノウハウといえる内容が乏しいケースが多いケースが見受けられます。

経理をアウトソーシングする際の費用

一般企業の費用感、病院経理の費用感

一般企業や診療所の費用感と比べ病院の経理の費用は専門性が高い分、工数が少し多くなる為、やや高くなる傾向はありますが、現状のトータルコストとの比較で検討していただくとメリットがあると言われています。

診療所と病院を同列で考えているアウトソーシング会社が多いですが、診療所と病院とでは専門性や複雑さは別次元の為、金額の違いは出来上がりの試算表や決算書等の違いである事で前提に検討をしていただく事となります。

アウトソーシングの費用感は先ほども記載しましたが、従来までの

直接経費としては、

・経理スタッフの給与・賞与・法定福利費・退職金・通勤交通費・福利厚生費はもちろんの事

・会計ソフトの毎年の保守料やリース料、

・顧問税理士の顧問料や決算料等



間接経費としては、

・経理スタッフの採用コストと面接等の時間

・採用後の育成を含めた時間

・引継ぎが終わるまでの人件費のダブルコスト

との比較検討となります。

アウトソーシングする際に気を付けること

アウトソーシングをする際に気を付ける事として、

病院や介護業界についてどれだけ精通しているかを確認する事が最も大切なポイントです。

経理のアウトソーシングを検討すべきタイミングとは?

経理のアウトソーシングを検討すべきタイミングとして多いケースは、

・経理スタッフの急な退職

・経理スタッフが立て続けに退職する

・長年金庫番を務めたスタッフの定年退職

・理事長や事務長の求める財務管理体制に引き上げたい

・経理スタッフをコア業務に人材の登用を行いたい

・財務管理のレベルを上げ、エビデンスをもとにした業績改善に取り組みたい

・ハローワークや求人サイトに登録をしても応募がないまたは、応募があっても求めるスキルに程遠い

等、さまざまなケースで相談が寄せられます。

また、切羽詰まるとアウトソーシング会社の十分な比較検討ができないまま、選定をしてしまう為、余裕をもって情報収集を始める事が納得した会社選びとなります。

上記以外で最近、多くご相談をいただいているケースとして、医事スタッフや看護師や介護士の採用が難しくなってきたと感じてきたタイミングで、経理のアウトソーシングを始められています。

理由はコア人材の育成をする為には数年の時間と経験が必要になる為、院内の体制の見直しを早めに見直していく事からスタートが必要な為です。

まとめ

アウトソーシングのメリット・デメリットを整理致しましたが、経理のアウトソーシングは以前のように敷居の高いテーマではなく、環境変化に応じて柔軟に対応しておくべきテーマである事がイメージいただけたかと思います。

繰り返しになりますが、経理業務のアウトソーシングの検討は経理スタッフの退職に伴う内部環境に伴う事由だけでなく、人口減少に起因した外部環境の影響を今後はさらに大きく受けるケースが増えてきます。

上記の事から、病院では医事業務、給与計算、経理業務の3つの管理部門でアウトソーシングの活用がより広がってくるものと推察します。

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