クリニック、病院経理代行の知っておきたい豆知識
クリニック(診療所)を中心としている経理代行と病院を専業として行っている経理代行では、取り扱っている業種は同じでも経理代行業務として業務内容のボリュームと求められる質が全く異なります。本テーマでは具体的に掘下げて紹介致します。
クリニックと病院の経理代行業務の違い
病院はクリニックと比べると売上規模が異なり、行っている事業も病院、老健、クリニックの本来業務だけではなく、介護事業等の付帯業務を幅広く行っているケースが多くあります。
それに比例し病院の仕訳数はクリニックよりも10倍~20倍多く、1か月で5,000仕訳を超える法人も決して珍しくはありません。
一方で、試算表を仕上げるタイミングは翌月15日~20日前後とクリニックと同程度である事から経理代行業者(アウトソーシング会社)のノウハウと仕組みが整っていなければ、期待通りの結果を得られない事は明らかです。
作成した試算表が事業内容や現場実態に応じた適切な数値が反映されているかを常に判断できなければ、アウトソーシング会社としては品質の検証ができないという事につながります。
さらに、特定医療法人や社会医療法人は税務申告の後に行政に定期報告書類の提出が必要なため、一気通貫して行う為には売上区分や事業区分において高い専門性が求められるため、病院専業でなければ、業務品質を担保する事が困難であると言われています。
経理代行業務は、記帳代行業務(会計ソフトへの入力業務)以外に金融機関での総合振込の登録や事業報告書の作成、特定医療法人や社会医療法人においては定期報告書類の作成等の行政への提出書類の作成の他、病棟別・診療科別損益の作成や運営会議の資料作成等までが含まれる事から、高いノウハウと品質が求められています。
最近の傾向として、記帳代行業務だけではなく経理代行業務のご相談とご依頼がかなり増加しています。 その背景にあるのは、後述で詳しくご説明致しますが、マンパワー不足の為、任せられる業務は全て依頼したいという事情と考えられます。
病院経理を代行するメリット
本業に専念できる
一部の限られた地域以外はすでに人口減少が始まり、2040年に向けてより一層の人口減少が全国規模で進みます。
患者や利用者の減少はもちろんの事、医師や看護師、コメディカルの医療従事者の確保も難しくなりますが、経理人材の確保もより一層、難しくなると予想されます。
病院では医事業務の外注化(アウトソーシング)が進み、次は経理と給与計算が外注化(アウトソーシング)が進むと言われています。経理や給与計算は代行業者(アウトソーシング会社)に依頼をし、限られた人材を適材適所に配置する事で、本業に専念する事が可能となります。 兼務で経理業務を行うと、期限のある支払業務のみを優先し、それ以外の業務は後倒しになり、経理業務を集中して行う環境でなければ抜けや漏れが発生し、本来の経理業務の役割が担えなくなります。
経理業務は適切に行っていればアラーム機能を発揮できる業務ですが、兼務をする事でその機能すら失う事となります。
雇用するより費用対効果が良い(人件費削減)
同じ経理スタッフが経理業務を長期間行っている場合、旧態依然の業務のままで経理業務そのものが時代の変化から取り残されているケースがしばしば見受けられます。
これは経理業務を担うスタッフは保守的な性格の方が多い事に起因するとも言われています。経理業務の特性から保守的な性格は決してネガティブな事ではありませんが、時代の変化に応じて業務フローを見直さなければ、業務効率が上がらないばかりではなく、必要な経営資料がタイムリーに作成する事ができず、大きなロスにつながる可能性があります。
経理代行業者(アウトソーシング会社)に依頼する事で、同じ業務を依頼しても新しいハードとソフトを用いて、スピーディーに高い業務品質を享受でき、定額の経費で安定供給が実現します。
また、経理スタッフを新たに採用するフェーズの際には、期待を上回るスタッフを採用できることは極めて稀であり、面接でできると確認した業務ができない場合は、追加人員を募集せざるを得ないケースも考えられます。経理経験者を採用できても、病院独特の商慣習や税務的な判断に慣れるまで多くの時間を要するケースもあります。
また、人間関係を苦にして経理スタッフが定着しないケースも見受けられます。
紹介会社からの採用の場合は紹介手数料が発生しますし、求人サイトへの募集登録の場合も手数料が発生します。また、採用して定着しない場合は、入職手続きの事務ワークや社会保険の手続き費用等の負担も積み重なります。
上記の事から、雇用する事によるリスクと費用負担の増加を鑑みると代行業者(アウトソーシング会社)の検討も有効な手段となります。
会計ソフトや顧問税理士などの経理関連費用の見直しのチャンス
院内で経理を完結する事を、「自計化」と会計業界では表現をします。
自計化の場合は、顧問税理士の提案で高額な会計ソフトの導入を勧められるケースが見受けられます。使いこなせていればまだしも、最小限の機能しか使用していないのにも関わらず、スペックの高い会計ソフトを導入しているケースも見受けられます。
また、医療法人会計に準拠していない会計ソフトをいまだに使用しているケースも見受けられます。
会計ソフトを購入する場合は、税法の変更に対応する為、毎年保守料の支払いが発生します。または、保守料を含めたリース契約をしているかのいずれかのケースです。
経理代行業者(アウトソーシング会社)に依頼する事で、原則的には会計ソフトの買い替えや保守料の支払いが不要となります。
また、病院の知識の乏しい顧問税理士では、税務調査の対応がお粗末なケースや、経営相談もままならないケースもしばしばです。
経理代行を依頼する事で、顧問税理士の顧問料や決算料の見直しのチャンスにもつながります。
いわゆる経理業務の周辺コストを含めたトータルコストで経理代行業者(アウトソーシング会社)を比較検討する事で、従来の固定概念を取り除いて検討をする事をお勧め致します。
病院経理の代行するデメリット
人材能力はさまざま
経理の専門家に依頼しているつもりでも、経理代行業者(アウトソーシング会社)によっては、病院の経理代行が初めてというケースも考えられます。もしくは、担当するスタッフが病院について初めてというケースも決して珍しい事ではありません。
病院に特化していなければ、返戻・再請求・請求保留の考え方が理解できず、売上や利益が大幅にぶれる事も考えられます。また、消費税や事業税が適切に課税判断されないケースも容易に想定されます。
病医院に特化していたとしても、クリニックと病院の経理代行は求められるスキルが全く異なる為、留意が必要です。
弊社スタッフは、病院専業の為、病院や介護事業においては高い専門性を有していると自負していますが、製造業や小売業、飲食店となると品質を維持する事が難しい為、経理代行のご依頼はお断りをしています。医師にも専門の診療科があるのと同様に、経理代行業者(アウトソーシング会社)にも専門領域がある為です。
経理代行業者(アウトソーシング会社)の専門領域を見極める事が、何よりも重要となります。
申告は税理士に依頼
経理代行業者の業務範囲とあわせて顧問税理士との事前すり合わせも大切なファクターです。
顧問税理士が、仕訳の内容を把握せずに毎年ルーチンで税務申告を行っている場合は、特に注意が必要です。
弊社があえて税理士法人で経理代行業務を行っている理由は、必要に応じて税務申告まで一気通貫で業務を行える体制を持つ事が、結果的にお客様の利益につながると考えている為です。
具体的には、税務申告(法人税・地方税・消費税の申告)や法人税・地方税・消費税・源泉所得税・住民税等の電子納税、さらには年末調整、法定調書の作成、合計表の提出、償却資産税申告書の作成・提出等、経理代行業務は税務に関する領域が多く含まれている為です。
もちろん、顧問税理士の先生が決算業務や税務関係業務を引き受けていただける場合は、税務申告や税務業務はお願いをしています。 外注化(アウトソーシング)の検討時に現状の顧問税理士の関わり方を含めて、経理代行業者(アウトソーシング会社)に具体的な相談をする事が良いと考えます。中途半端な状態は、時間的にも費用的にもロスをする為、遠慮せずに相談をして進めるのが良いと考えます。
情報の外部流出の可能性
昨今では、情報の外部流出がニュースでも取りざたされています。
メールの誤送信のリスクをゼロにする為にも、データのやりとりにおいては、お客様とのクローズな環境下でのデータの送受信は必須の機能です。
また、データ以外にも請求書等の書類の紛失リスクが考えられます。経理代行業者の業務フローやスタッフ教育の違いによって、書類の紛失等のリスクも考えられる為、経理代行業者の品質管理体制の確認が必要です。
しかし、情報漏洩は経理代行業者のみで発生する事ではなく、病院のネットワークの脆弱性について、かねてから指摘されている内容の為、セキュリティー対策は双方で留意が必要と考えられます。
まとめ
診療所と病院では収益構造も大きく異なる為、それぞれの専門性を持った経理代行業者(アウトソーシング会社)に相談する事で、よりイメージの持てる相談結果になるものと思われます。