
社会医療法人の決算の進め方
社会医療法人の決算業務の現状と課題
社会医療法人は一般的な医療法人とは異なり、医療法で定められた会計監査が必要なことがほとんどです。ただ、社会医療法人によって決算にかける時間はずいぶんと違っています。そこで、弊社が実践している社会医療法人の決算の進め方を記載いたします。
社会医療法人の決算は大きく分類すると以下のステップです。事業所ごとに内容を固め、非課税事業と課税事業に分類した後に税計算を行い、組替表で医療法人会計の沿った決算書に再整理を行います。さらに開示書類を整備し、開示書類に一致するように社会医療法人の定期報告書類をまとめます。
そのため、経理や財務部門の業務が落ち着くには6月ギリギリまでかかっている社会医療法人もあり、ギリギリの仕事で追い詰められた仕事の進め方を改善したい、と弊社に相談をいただく事があります。
決算早期化を実現する仕組みと組織体制
弊社は5月中旬には定期報告書類を作成する流れが標準スケジュールとします。その為には、段取りと仕組みを整え、関係部署や関係者を巻き込みながら決算関係業務を行っている事が他の会計事務所と大きく異なる点です。今の標準形にたどり着くまでは、さまざまな社会医療法人のお客様と10年以上、試行錯誤を繰り返しながら毎年仕組みを整えてきました。
具体的には、経理や財務部門の工夫と努力だけでなく、医業未収金等は医事課に、各種棚卸については、薬局や中材部門・栄養課・総務に、退職給付引当金・賞与引当金は人事部に協力をいただく等、決算は経理や財務部だけの仕事ではなく、法人内の協力が欠かせない仕事であることを局長や事務長がリードしていただけている病院はスムーズに決算を進めることができています。また、監査法人と協調しホウレンソウを密に行うからこそ、スケジュールを前倒しに行うことが実現しています。
決算早期化は、月次試算表の早期化の積み上げが法人内にリズムとして定着している事がベースです。弊社で月次の〆が早いお客様は翌月8日に仕上げられています。それが実現できている理由はトップが試算表の締め日を決めて業績確認を行い、現場の状況を把握し指示を出すリズムを創り上げている為です。決算は目的がなく早期化を掲げても続きません。しかし、目的をもって仕組みを整えれば、必ず早期化が実現できます。ただし、仕組みの整え方がポイントです。目的に合った仕組みを聖域なく取り入れる事が重要です。
顧問税理士や監査法人に遠慮をしていれば、目的は達成できません。マネジメントのリズムを外部ブレーンの為に犠牲にする事は本末転倒です。社会医療法人といえども、経営の安定が約束されているわけではない為です。

具体的な決算スケジュールと今後の展望
話を戻して、弊社の決算の標準的なスケジュールです。
3月末までに退職給付引当金、賞与引当金は監査法人が確認。
4月10日までに棚卸しが現場から提出。
4月20日前後に3月の試算表の完成。
4月末までに税務申告が完成し、開示書類も完成。
5月10日までに定期報告書類が完成
上記のスケジュールで進める為には、監査法人の期末監査で修正が必要なことがないような事前にスケジュール調整と対応がもちろん必要です。
上記スケジュールを実践する為の仕組みは、個別に連絡をいただければ貴法人の状況に応じた仕組みのご提案をさせていただきます。また、体制整備には数年を要することもありますが、ステップアップしながら現状よりもトータルコストを抑えながら、仕組みの整備を行う事が弊社は基本方針としています。大手会計事務所は経理や財務部門の実務の業務量の多さを本質的に理解していないことが多い為、業務パフォーマンスやコストパフォーマンスを考慮せずに会計事務所にとって都合の良い会計ソフトを選定している事がしばしばです。医療機関が何を実現したいのかを今一度明確にし、会計ソフトや会計事務所を選択する時代になっています。
決算を早期化できれば見直す時間もある為、結果的にミスの防止にもつながります。会計事務所や監査法人のスケジュールに引きずられる事なく、経理・財務部門が主体的にスケジュールをたてる事で決算の一連の仕事を前倒しに進める事で、仕事のリズムが安定し、働くスタッフのモチベーションも大きく変化し、離職防止にもつながります。